インプラント

インプラントの老後への影響は?

インプラントの老後への影響は?

インプラントは失った歯を補うための優れた方法ですが、特に50歳、60歳以降の方々にとっては、老後の生活を見据えた重要な選択肢となります。老後の生活の質を向上させるために、インプラントがどのように影響するのかを考察してみましょう。

高齢者がインプラントを選ぶ理由

高齢者

1. 高齢者の生活の質の向上

高齢者にとって、食事の楽しみや人付き合いの維持は非常に重要です。インプラントを使用することで、これらを保つことができます。特に、噛む力が回復することで、好きな食べ物を制限なく楽しむことが可能になり、食事を伴う会合などへも積極的に参加出来るようになります。

2. 食事の楽しみを維持する

食事は単なる栄養補給だけでなく、人生の楽しみの一部です。インプラントを使用することで、歯を失ったことによる食事の制約を克服し、再び美味しい食事を楽しむことができます。

3. 認知症予防につながる可能性

研究によれば、しっかり噛むことが認知症の予防に繋がるとされています。噛むことで脳への刺激が増し、血流が促進されるため、脳の健康を維持する助けとなります。

インプラントの高齢者へのメリット

インプラント

1. 咀嚼機能の改善

インプラントは顎骨に直接固定されるため、天然歯に近い咬合力を発揮します。これにより、硬い食べ物や繊維質の多い食品も噛めるようになります。結果として、高齢者の食事の選択肢が広がり、栄養バランスの改善にもつながります。

2. 発音の明瞭化

歯を失うことは発音に大きな影響を与えます。特に前歯部分の欠損は「サ行」や「タ行」などの発音を困難にします。インプラントにより、これらの音を正確に出せるようになりますので、はっきりと発音できるようになり、言葉が聞き取りやすくなります。

3. 顔の形状維持

歯を失うと、その部分の顎骨が徐々に吸収されていき、その結果、顔のたるみや顔つきの変化を引き起こす原因となります。インプラントは顎骨への刺激を維持し、骨吸収を防ぎますので、若々しい顔立ちの維持に繋がります。

4. 心理的効果

歯の欠損は外見や機能面だけでなく、精神的にも大きな影響を与えます。インプラントにより自然な笑顔を取り戻すことで、自信が回復し、社交的な活動への参加意欲も高まります。

5. 長期的な安定性

適切なケアと定期的なメンテナンスを行えば、インプラントは10年以上、場合によっては生涯使用できます。これは、頻繁な歯科治療の必要性を減らし、長期的な口腔の健康維持につながります。

6. 隣接する歯への負担軽減

ブリッジの治療では隣接する歯を削ってブリッジの支台にする必要がありますが、インプラントはそれ自体が自立しているため、周囲の歯を傷つけずに済みます。これにより、将来的に隣接する歯に問題が起こるリスクを軽減できます。

7. 入れ歯の不安定感の解消

従来の入れ歯は、ずれや外れ、食べ物のカスが挟まるなどの問題がありました。インプラントは顎骨に固定されているため、これらの問題がなく、より自然な感覚で使用できます。また、口蓋を覆う必要がないため、味覚への影響も最小限に抑えられます。

これらのメリットは、高齢者の生活の質を大きく向上させる可能性があります。ただし、個々の健康状態、骨密度、経済的な面、そして手術に対する心理的な影響など、様々な要因を考慮する必要があります。

インプラントの高齢者へのデメリットとリスク

1. 手術のリスク

インプラントの埋入手術は外科的処置を伴います。高齢者にとって、手術自体が大きな負担となることがあります。特に麻酔に対するリスクが増大するため、心臓病や呼吸器疾患を持つ方は慎重な評価が必要です。手術後の感染や出血、術後の痛みも考慮しなければなりません。

2. 傷の治りが遅い

高齢者は一般的に若年者に比べて治癒速度が遅くなります。インプラント手術後の傷の治りが遅くなることで、感染のリスクが高まる可能性があります。特に糖尿病や免疫力の低下が見られる方は、治癒がさらに遅れることがあります。

3. メンテナンスの必要性

インプラントは定期的なメンテナンスが欠かせません。高齢者にとっては、定期的に歯科医院に通うことが難しい場合があります。また、自宅での口腔ケアも重要であり、これを怠るとインプラント周囲炎を引き起こすリスクが高まります。

4. 費用の問題

インプラント治療は保険がきかないため高額です。高齢者は治療費を負担することが難しい場合があります。また、メンテナンスや将来的な修理費用も考慮する必要があります。

5. 適応症の制限

インプラント治療は全ての高齢者に適しているわけではありません。特に、以下のような条件を持つ方は治療が制限されることがあります。

  • 骨粗鬆症・・顎の骨の質が低下しているため、インプラントがしっかり固定されない可能性があります。
  • 糖尿病・・血糖値のコントロールが難しい場合、治癒が遅れるリスクが高まります。
  • 心臓病や血液疾患・・手術に伴うリスクが高まるため、治療前に十分な評価と対策が求められます。

6. 介護時の対応

将来的に介護が必要となった場合、インプラントのケアが難しくなることがあります。介護者がインプラントの清掃方法を理解していない場合、インプラント周囲炎などの問題が発生しやすくなります。

7. 義歯との比較

入れ歯はインプラントに比べて手軽に取り外しや清掃が可能です。一方、インプラントは固定式なので、清掃が不十分になると周囲炎などのリスクが高まります。また、義歯は保険適用で作製できるため、経済的な負担が少ないというメリットもあります。

8. 合併症のリスク

インプラント手術後には、いくつかの合併症のリスクがあります。例えば、神経損傷や顎骨の損傷などです。これらの合併症は、高齢者にとって特に深刻な問題となる可能性があります。

9. 心理的なストレス

手術や治療に対する不安や恐怖は、特に高齢者にとって大きなストレスとなることがあります。手術後の痛みや不快感も、心理的な負担を増やすことに繋がります。

10. 長期的な成功率の不確実性

インプラントの長期的な成功率は個々の健康状態や口腔内の状況によって異なります。高齢者にとっては、全身の健康状態や骨の質が変化していく可能性があり、インプラントの長期的な成功を保証することが難しい場合があります。

インプラントのケアとメンテナンス

日常の清掃方法

インプラントを長持ちさせるためには、毎日の口腔ケアが不可欠です。歯ブラシや歯間ブラシを使用して、インプラント周囲に汚れがつかないように清掃を徹底しましょう。

定期健診の重要性

定期的に歯科医師の診察を受けることで、インプラントの状態をチェックし、早期に問題を発見・対処することができます。

介護が必要な場合の対応

将来的に介護が必要になった場合でも、インプラントのケアがしやすいように、介護者に適切な指導を行うことが重要です。

【動画】老後を考えるとインプラントは有りか無しか?

まとめ

インプラントは歯を失った高齢者にとって、歯の機能と見た目を回復させるための有効な選択肢です。咀嚼機能の改善、発音の明瞭化、顔の形状維持など、多くのメリットがあります。特に、食事の楽しみを取り戻し、社交生活を活発にすることで、心身ともに健康的な老後を送るための一助となります。

しかし、手術のリスクや高額な費用、メンテナンスの必要性など、考慮すべきデメリットも存在します。また、全身の健康状態や骨の質によっては、適応できない場合もありますので、担当の歯科医師とよく話し合って治療を選択する必要があります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 心斎橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 山田 秀史

2007年 松本歯科大学卒業。2011年 松本歯科大学大学院卒業。日本口腔外科学会認定医。アストラテックインプラント認定医。

▶プロフィールを見る

心斎橋クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック