インプラント

インプラント治療後は腫れる?

インプラント治療後は腫れる?

インプラント手術後の腫れは多くの患者さんが経験する一般的な症状です。腫れが起こっても、治療が正常に進行している場合がほとんどですが、時には適切な対処が必要になることもあります。インプラント治療後の腫れについてご説明します。

インプラント治療後の腫れはなぜ起こるのか?

天然歯とインプラントの違い

インプラント治療後に腫れが生じるのは、治療の性質上、ある程度避けられない反応です。手術によって歯茎や骨が刺激され、炎症反応が起こるためです。この腫れは、体が傷を治そうとする自然な防御反応の一部であり、多くの場合、時間の経過とともにおさまります。

腫れの原因

女性

手術による組織の刺激や損傷

手術中に歯茎の切開や骨へのドリルの使用で傷がつくと、身体が損傷を修復するために炎症反応を引き起こします。この過程で腫れが発生します。特に骨にインプラントを埋め込む過程では、骨組織が負担を受けるため、腫れが出やすくなります。

感染リスクに対する免疫反応

身体は手術後の感染を防ぐために白血球を動員し、この過程で腫れたり赤くなったりすることがあります。これは炎症性サイトカインが分泌されるためであり、免疫システムが積極的に働いていることを示しています。

骨や歯茎への負担

インプラントを埋入する際に骨や歯茎にかかる圧力や刺激が、腫れを引き起こす原因となることがあります。この負荷が強い場合、腫れがより大きくなることがあります。

腫れは通常、手術後1~3日間でピークに達し、その後徐々に収まっていきます。ただし、腫れが1週間以上続く場合や、激しい痛みを伴う場合は注意が必要です。適切なケアを行うことで、腫れを効果的に抑えることができます。

どのような人が腫れやすい?

腫れやすさは患者さんの体質や治療の内容によって変わります。腫れを悪化させる可能性があるのは以下のような点です。

体質

アレルギー体質や炎症を起こしやすい体質の方は、手術後の腫れがひどくなる傾向があります。このような方は、術前に医師に体質について相談することで、事前に適切な対策を講じることが可能です。

出血しやすい体質の人

  • もともと血流が多い部位にインプラントを埋入するため、少しの刺激でも腫れやすくなることがあります。
  • さらに、血が止まりにくい体質の人や血液をサラサラにする薬(抗凝固薬など)を服用している人は、腫れが長引く傾向があります。

治療内容

複数のインプラントを一度に埋入したり、骨造成(骨移植など)を行う場合に、腫れが発生しやすくなります。特に規模の大きな治療では、手術時間や使用する器具の影響で腫れがより大きくなりがちです。

増骨の処置を受けた人

  • インプラントを埋入する際に骨の厚みや高さが不足している場合、骨移植を行うことがあります。
  • この処置は通常のインプラント手術よりも組織へのダメージが大きく、炎症反応が強く出やすいため、腫れが目立つことがあります。

手術時間が長かった人

  • インプラント手術の時間が長くなると、組織への刺激が増えるため、腫れが出やすくなります。
  • 特に、複数本のインプラントを埋入した場合や、骨造成を行った場合は手術時間が長くなりやすいため注意が必要です。

生活習慣

喫煙や飲酒は身体の回復力を低下させ、炎症を長引かせる可能性があります。喫煙は血管を収縮させ、傷の治癒を遅らせるため、腫れが悪化することがあります。インプラント治療には禁煙をおすすめしています。

喫煙者

  • タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血流を悪化させ、傷の治りを遅くするため、腫れが長引く原因になります。
  • また、喫煙はインプラントの成功率を下げることもあるため、可能なら禁煙するのが望ましいです。

免疫力

糖尿病や免疫抑制状態などの持病を持つ方は、腫れが長引く可能性があります。これらの持病がある場合、術前に医師と相談し、適切な管理が行われることが推奨されます。

  • 糖尿病や貧血などの基礎疾患を持っている方、またはストレスや過労で免疫力が落ちている方は、傷の治りが遅くなるため、腫れが長引く可能性があります。

 

医師は事前にリスクを評価し、腫れの可能性についてご説明します。患者さんご自身がリスク要因を理解し、適切なケアを行うことで、腫れのリスクを軽減できます。

腫れを最小限に抑えるための予防策

インプラント後の腫れを防ぐためには、患者さんご自身が適切なケアを行うことが重要です。それには以下の予防策が有効です。

術後の冷却

  • 手術直後は冷やすことで炎症を抑える効果があります。冷却は腫れのピークを軽減し、回復を早める助けになります。
  • 氷嚢や冷却パッドを用い、15~20分ごとに冷却を行いましょう。
  • 冷却を続けすぎると凍傷になる危険があるため、適度な間隔で行うことが重要です。また、冷却を行う際には、直接肌に触れないようにタオルで包むと良いでしょう。

規則的な歯磨きと消毒

  • 術後は歯磨きや抗菌薬を使用して感染予防に努めます。抗菌薬の使用は、細菌の繁殖を抑え、炎症を予防する効果があります。
  • ただし、傷口を刺激しないように優しくケアを行うことが大切です。
  • 必ず医師の指示に従って行いましょう。特に、手術箇所の近くを避けながら行うことが重要です。

生活習慣の改善

  • 禁煙や健康的な食事を心がけることで、体の回復力を高められます。健康的な食事には、ビタミンCやEなどの栄養素が含まれている食品が効果的です。
  • 手術後数日はアルコールを控えるようにしましょう。アルコールは炎症を悪化させる可能性があります。
  • 十分な睡眠をとることも、炎症を抑える重要な要素です。睡眠中に体は傷の修復を行うため、回復に大きな影響を与えます。

腫れがひどい場合の対処法

万が一、腫れがひどくなった場合は、以下の方法を試してみてください。

1. 安静にする

  • 激しい運動や重労働を控え、身体を休めることで腫れを軽減します。身体を動かしすぎると血流が増加し、腫れが悪化する可能性があります。
  • 頭を高くして寝ることで、血液の流れを調整し腫れを抑えます。この方法は特に夜間に有効です。

2. 医師に相談

  • 腫れが長引く、あるいは痛みを伴う場合は速やかに担当医に連絡してください。医師が腫れの原因を特定し、必要に応じて追加の治療を行います。
  • 特に発熱や膿が出る場合は感染の可能性があるため、早急な対応が必要です。

3. 薬の服用

  • 担当医から処方された鎮痛剤や抗生物質を指示通りに使用します。これにより、痛みや腫れを効果的にコントロールできます。
  • 市販薬を使用する場合も、医師の指示に従うことが重要です。誤った薬の使用は逆効果を招くことがあります。

これらの対策を行うことで、腫れの悪化を防ぎ、快適な回復をサポートできます。患者さんが積極的に対処することで、治療後の生活がよりスムーズになります。

腫れを軽減するための日常的なケア

腫れを軽減するためには、術後の適切なケアが欠かせません。

柔らかい食べ物を摂取

  • 術後は固い食べ物を避け、スープやヨーグルトなど消化に良いものを選びましょう。これにより、術後の傷口に負担をかけずに栄養を補給できます。
  • 刺激物や熱い食べ物は避けることで、炎症を抑えられます。特に辛い食品や酸性の飲み物は避けるべきです。

定期的な健診

  • 術後の健診を必ず受け、医師と相談しながら回復の進行状況を確認しましょう。健診では、インプラントの安定性や炎症の有無をチェックします。
  • 健診時に疑問や不安を相談することで、適切なアドバイスを受けられます。

適切な口腔ケア

  • 歯磨きは術後の数日間は控えめに行い、医師の指示に従いましょう。
  • 刺激を避けるために柔らかい歯ブラシを使用しましょう。
  • マウスウォッシュを使用する場合も、アルコールを含まない製品を選ぶと強い刺激を避けることが出来ます。低刺激性の洗浄液を選びましょう。
  • 洗浄液の使用後は水で軽く口をすすぐことで、さらなる刺激を防げます。

まとめ

インプラント治療後の腫れは、術後の自然な反応である場合がほとんどです。適切な予防策とケアを行うことで、腫れを最小限に抑え、快適な回復を目指すことが出来ます。さらに、腫れへの対応の仕方を知ることで、不安を軽減し、治療後の生活をより快適にすることができます。

もし腫れが気になる場合や、不安がある場合は、迷わず担当医に相談してください。患者さんお一人おひとりに合ったケアを受けることで、安心してインプラント治療を進めることができます。

この記事の監修者
医療法人真摯会 心斎橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 山田 秀史

2007年 松本歯科大学卒業。2011年 松本歯科大学大学院卒業。日本口腔外科学会認定医。アストラテックインプラント認定医。

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