差し歯は根っこがない状態では行えないことが多いです。その理由は、歯の根っこを土台にして人工歯を差し込むからです。そもそも差し歯とは何か、歯の根っこがない状態ならばどのような治療が最適か、詳しくご紹介いたします。
差し歯とは
差し歯とは、虫歯や外傷によって失われた歯の一部または全体を補うために、歯の根っこ(歯根)に人工の歯冠を取り付ける治療法です。専門的には、被せ物(クラウン)と呼び、差し歯は見た目を美しくするだけでなく、咬み合わせを正しく保つためにも役立ちます。しっかりとしたご自身の歯根があれば、差し歯は長期間安定して機能するため、自然な歯と同じように噛む力を発揮できます。しかし、歯根がない場合には、差し歯を行えないことがほとんどです。
差し歯が行える条件
固定してしっかり噛めるよう差し歯がきちんと機能するには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
その1・健康な歯根の存在
差し歯を装着するには健康な歯根が必要です。歯根がしっかりしていれば、その上に土台を築き、差し歯をかぶせることができます。
その2・歯周病がないこと
歯周病が進行していると、歯周組織自体が弱まっていることが多く、差し歯を安定させることが難しくなります。歯周病がある場合は、まず歯周病の治療が優先されます。日本人が歯を失う原因の一位が歯周病であり、全身の健康に影響を及ぼすからです。
その3・土台の強度があること
歯根のみでなく土台となる部分が強くなければ、差し歯はしっかり固定されません。土台が弱いと、咬合力でぐらついたり、外れたりする可能性があります。
これらの条件が揃っていなければ、差し歯治療は適しておらず、別の治療法を検討する必要があります。
根っこがない場合の代替治療法
歯の根っこがない場合差し歯は難しく、他の選択肢をおすすめされるケースが多いです。下記のような代替治療法があります。
インプラント
インプラントは、人工の歯根を顎骨に埋め込み結合させ、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。差し歯との違いは、根っこがなくても顎骨に人工歯根を埋入してしっかり固定されるという点です。非常に安定しており、天然の歯と同程度に噛むことができます。
ブリッジ
ブリッジは、欠損歯の両隣の健康な歯を削って支えにして、人工の連結歯を被せて橋渡しのように装着する方法です。根っこがない場合でも適用可能ですが、隣の歯に大きな負担がかかるため、長期間の使用には注意が必要です。
入れ歯
入れ歯は、取り外しが可能な人工歯の一種で、部分的または全体的に歯を補うために使われます。根っこがなくても使用できますが、インプラントやブリッジに比べて安定性が低く、咬む力が弱いことが欠点です。
自分に合った治療法を選ぶには
根っこがない場合の治療法は、差し歯以外にも多くの選択肢があります。どの方法が適しているかは患者さんの口腔内の状態によって異なります。それぞれのメリットやデメリットをしっかりと考慮し、治療を選ぶ際には、次のポイントを考慮すると良いでしょう。
口腔内の健康状態を診断してもらう
虫歯や歯周病の有無、顎骨(高さ、厚み、骨量)などの状態を確認することが重要です。
予算と治療期間を把握する
インプラントは非常に安定していますが、自由診療に該当するため、治療費が高額であることと、手術後の回復に時間がかかるデメリットがあります。一方、入れ歯やブリッジは保険適用も選択でき、比較的治療費が安く短期間で治療が完了しますが、長期的な安定性には欠け、他の歯の健康に影響を及ぼします。
審美性がどの程度必要か
インプラントは自然な見た目と咬み心地があるため、審美性が高く他の残存歯に影響を及ぼさないというメリットがある治療法です。見た目や他の歯の健康を重視する方にはインプラントがおすすめですが、費用面を考慮してブリッジや入れ歯を選ぶ方もいます。
まとめ
差し歯は基本的に歯の根っこがしっかりしている場合に適用される治療法です。根っこがない場合には行い難い治療ですが、インプラントやブリッジ、入れ歯といった代替治療法があります。自分の口腔内の状態や予算、審美性の希望に合わせて最適な方法を選ぶためには、歯科医師との綿密な相談が不可欠です。