歯ぎしりが強いとインプラントは壊れやすい?原因と対策を解説

心斎橋クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 山田 秀史

歯ぎしりが強いとインプラントは壊れやすいですか?

強い歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラントの被せ物が欠ける、ネジがゆるむなどの機械的トラブルが起こるリスクは高くなると考えられています。

さらに近年の研究では、歯ぎしりが疑われる人では、そうでない人に比べてインプラントそのものの失敗リスクも高かったという報告があります。

ただし、歯ぎしりがあるからインプラント治療ができないわけではありません。

治療前に噛む力や歯のすり減り方を確認し、インプラントの位置、人工歯の設計、噛み合わせを調整したうえで、必要に応じてナイトガードなどを使用して管理します。

この記事を読むとわかること

  1. 歯ぎしりがインプラントへ与える影響
  2. 歯ぎしりで壊れやすい部分
  3. インプラントそのものが折れることはあるのか
  4. 歯ぎしりが強い人でもインプラントを受けられるのか
  5. インプラントを歯ぎしりから守る方法
  6. ナイトガードの役割
  7. 治療後に確認したい症状

大切なのは、「歯ぎしりがあるか、ないか」だけで判断するのではなく、どの程度の力が、どこに集中しているかを見ながら対策することです。

 

ブルーラジカル

歯ぎしりが強いとインプラントは本当に壊れやすくなりますか?

はい。強い歯ぎしりや食いしばりがある場合、インプラントを支える人工歯やネジなどに繰り返し大きな負担がかかるため、機械的トラブルのリスクが高くなると考えられています。

2024年に公表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、歯ぎしりが疑われる患者さんのインプラントは、歯ぎしりがない患者さんと比較して失敗リスクが高いという結果が報告されています。

歯ぎしりによるトラブルは、人工歯の小さな欠けからネジのゆるみ、まれにはインプラント体そのものの問題まで程度が異なります。
しかし、すべてがインプラントの撤去につながるわけではありません。

起こり得るトラブルどのような状態?
人工歯の欠け・破損セラミックなどの人工歯が欠けたり割れたりする
ネジのゆるみ人工歯などを固定しているネジがゆるむ
ネジの破損繰り返し大きな力を受け、ネジが破損することがある
インプラント体の破損頻度は高くないものの、インプラント本体に問題が生じることがある
インプラントの失敗骨との結合を維持できず、治療が必要になる場合がある

つまり、「歯ぎしりでインプラントが壊れる」と聞いても、いきなり顎の骨に入っているインプラント本体が折れるとは限りません。
比較的多く問題になりやすいのは、人工歯やネジなど、噛む力を受ける部分のトラブルです。

歯ぎしりで注意したいのは、インプラント本体だけではありません。被せ物・ネジ・噛み合わせを含めた「インプラント全体への負担」を見る必要があります。

インプラントでは歯ぎしりによる負担だけでなく、治療後に被せ物やスクリューの破損・緩みなどが起こることがあります。インプラント治療全体のリスクについては、インプラント治療の主なリスクとは?リスクを最小限に抑える方法を解説でも詳しく解説しています。

インプラントはなぜ天然歯よりも歯ぎしりの影響を考える必要があるの?

インプラントはなぜ天然歯よりも歯ぎしりの影響を考える必要があるの?の図解

天然歯とインプラントには、力の受け止め方に違いがあります。
天然歯の歯根と顎の骨の間には、「歯根膜」という薄い組織があります。歯根膜には、噛んだときの力を受け止める働きがあります。

一方、インプラントは顎の骨と直接結合しています。
そのため、天然歯とまったく同じ仕組みで力を受けているわけではありません。

歯ぎしりでは、食事のように短時間だけ噛むのではなく、繰り返し歯をこすったり強く食いしばったりします。
この反復する力が、インプラントの人工歯やネジなどへ負担となる可能性があります。

比較項目天然歯インプラント
骨との間歯根膜がある骨と直接結合している
力の受け方歯根膜が力を受け止める構造が天然歯とは異なる
歯ぎしり歯の摩耗や破折などが起こることがある人工歯・ネジなどへの負担に注意が必要
定期確認歯の摩耗・噛み合わせを確認人工歯・ネジ・噛み合わせなども確認

もちろん天然歯なら歯ぎしりの影響を受けないという意味ではありません。天然歯も歯ぎしりによってすり減ったり、欠けたりすることがあります。

インプラントでは天然歯とは構造が異なるため、その特徴を踏まえて力を管理する必要があるということです。

インプラントに歯ぎしり対策が必要なのは「弱い歯だから」ではなく、天然歯とは力の受け方が異なるためです。

歯ぎしりが強い人でもインプラント治療はできますか?

歯ぎしりがあるだけで、インプラント治療ができないと決まるわけではありません。
重要なのは、治療前に歯ぎしりや食いしばりの兆候を確認し、そのリスクを治療計画に反映することです。

歯科医院では、たとえば次のような点を確認します。

  1. 歯のすり減り方
    → 天然歯が広範囲に平らになっている場合などは、強い力が加わっている可能性を考えます。
  2. 被せ物が頻繁に欠けていないか
    → 過去に被せ物や詰め物を繰り返し破損している場合も、噛む力を確認する材料になります。
  3. 噛み合わせ
    → 特定の歯やインプラントだけに力が集中しないかを確認します。
  4. 顎の筋肉の状態
    → 朝に顎が疲れている、筋肉が張っているといった症状がないか確認します。
  5. 家族から歯ぎしりを指摘されていないか
    → 睡眠中の歯ぎしりは自分では気づいていないことがあります。

ただし、歯の摩耗や朝の顎の疲れがあるだけで、睡眠時の歯ぎしりを確定できるわけではありません。
歯ぎしりの評価には問診や臨床所見などを組み合わせて判断します。

歯ぎしりがあるかもしれない方では、「インプラントを諦める」のではなく、「力のリスクを治療前から把握して設計に反映する」ことが重要です。

歯ぎしりがある場合、インプラント治療にどんな工夫が必要ですか?

歯ぎしりのリスクがある方では、インプラントを入れた後だけでなく、治療計画を立てる段階から噛む力を考えることが重要です。

代表的な対策には、

  1. インプラントへ力が集中しにくい位置を検討する
  2. 人工歯の形を調整する
  3. 噛み合わせを細かく確認する
  4. 人工歯の材質を症例に合わせて検討する
  5. 治療後も噛み合わせの変化を確認する
  6. 必要に応じてナイトガードを使用する

などがあります。

「丈夫なインプラントを選べば歯ぎしりに勝てる」という単純な話ではありません。
インプラント本体だけでなく、人工歯・ネジ・噛み合わせまで含めた全体設計が重要です。

対策目的
噛み合わせの調整特定の部分への過度な力の集中を避ける
人工歯の設計横方向などの過剰な負担を考慮する
材料の検討歯ぎしりの程度などを踏まえて選択する
ナイトガード睡眠中の機械的な負担から歯や人工歯を保護する
定期的な確認ネジのゆるみ・人工歯の欠け・噛み合わせの変化などを早期に見つける

歯ぎしりがある患者さんでは、治療が終わった時点の噛み合わせだけを見ればよいわけではありません。
周囲の天然歯がすり減ったり、噛み合わせが少しずつ変化したりする可能性もあるため、治療後にも確認を続けます。

歯ぎしり対策は「壊れてから修理する」のではなく、インプラントを入れる前の設計から始まっています。

インプラント治療の診査・治療計画・メンテナンスについては、日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針2024」も参考になります。

ナイトガードを使えばインプラントは壊れなくなりますか?

ナイトガードを使えば絶対に壊れなくなる、とはいえません。
ナイトガードは就寝時に歯へ装着するマウスピースで、歯や人工歯に加わる機械的な負担への対策として使用されることがあります。

ここで大切なのは、ナイトガードは歯ぎしりそのものを必ず止める装置ではないという点です。

2021年のシステマティックレビューでは、歯ぎしりそのものを治療する方法として、咬合スプリントが他の方法より明確に優れていると結論づけるには、エビデンスが十分ではないとされています。

一方、2026年のレビューでは、咬合スプリントは歯ぎしりに伴う機械的な影響から歯などを守る目的で使われる保存的な選択肢として位置づけられています。

つまりナイトガードは、

「歯ぎしりを完全になくす装置」ではなく、「歯ぎしりがあっても歯や人工歯へのダメージをできるだけ減らすための装置」

と考える方が適切です。

ナイトガードを使っているから安心して放置できるわけではありません。人工歯・ネジ・ナイトガード自体の摩耗も定期的に確認します。

歯ぎしりを続けるとインプラント周囲炎になりますか?

「歯ぎしりが強いと直接インプラント周囲炎になる」と単純に説明するのは適切ではありません。

その理由は、インプラント周囲炎の中心的な原因は、インプラント周囲に歯垢がたまり、細菌による炎症が起こることだからです。
この点を混同しないことが重要です。

そのため、歯ぎしりでは力の問題、インプラント周囲炎では感染・炎症の問題として、それぞれ対策する必要があります。

つまり、
①歯ぎしりには噛み合わせや力への対策、
②インプラント周囲炎には歯磨き・歯間清掃・定期メンテナンス
という風に、異なる方向からインプラントを守る必要があります。

「力」と「細菌」は別のリスクです。歯ぎしり対策だけしていればインプラント周囲炎を防げるわけではなく、毎日の清掃も欠かせません。

インプラント周囲から出血や腫れ、膿などがみられる場合は、歯ぎしりだけでなくインプラント周囲炎についても確認が必要です。詳しくは、ブルーラジカルはインプラント周囲炎に効果ある?適応できるケースと注意点を解説も参考にしてください。

どんな症状があれば歯科医院で確認した方がいいですか?

歯ぎしりがある方は、「痛くなったら受診」だけではなく、人工歯や噛み合わせの小さな変化にも注意しましょう。

特に確認したいのは次のような症状です。

  1. 噛んだときに以前と違う感じがする
  2. 人工歯が少し動く感じがする
  3. カチカチという違和感がある
  4. 被せ物が欠けた
  5. ネジがゆるんでいるように感じる
  6. ナイトガードが強くすり減る、割れる
  7. 朝起きたときに顎が強く疲れている

こうした症状があっても、インプラント本体に問題があるとは限りません。
ネジのゆるみや人工歯の破損など、比較的早い段階で対応できる場合もあります。

歯ぎしりが強い方では、「完全に壊れたかどうか」より、以前から変化していないかを見ることが大切です。
小さな異変が、力の集中を示している場合があります。

気になる変化考えられる状態対応
人工歯が欠けた過度な力などの影響早めに歯科医院で確認する
噛み合わせが変わった人工歯や周囲の歯の変化噛み合わせを確認する
カタつきを感じるネジなどのゆるみの可能性そのまま使い続けず受診する
ナイトガードが著しく削れる強い歯ぎしりが続いている可能性装置と噛み合わせを確認する
インプラント周囲から出血する周囲組織の炎症など清掃状態を含めて診察を受ける

特に「インプラントが動く感じがする」という場合は自己判断で様子を見ず、歯科医院へ連絡してください。
また、外れかけた人工歯を自分で締めたり接着したりするのも避けましょう。

歯ぎしりが強い方では、「壊れたら受診」ではなく「ゆるみ・欠け・噛み心地の変化」の段階で確認することが、トラブルを大きくしないポイントです。

インプラントの人工歯が動く、カタつくなどの違和感がある場合は、ネジのゆるみなどが起きている可能性があります。詳しくは、インプラントがぐらつく場合の原因とは?すぐに行うべき対処法も参考にしてください。

歯ぎしり対策のためには費用や通院が増えますか?

歯ぎしりがある場合でも、インプラント治療の基本的な流れが大きく変わるとは限りません。
ただし、噛み合わせの確認や調整、ナイトガードの作製、人工歯やネジの定期確認などが必要になることがあります。

ナイトガードなどにかかる費用は、治療内容や歯科医院によって異なります。

インプラント治療を受ける前に、

  • ナイトガードが必要か
  • 治療費に含まれているか
  • 破損した場合の修理費
  • 人工歯やネジの保証内容
  • メンテナンスの頻度

などを確認しておくと安心です。

歯ぎしりが強い患者さんでは、インプラントを入れることだけでなく、その後の力の管理まで治療計画の一部として考える必要があります。

歯ぎしりがある方は、治療前に「壊れた場合の保証」だけを見るのではなく、「壊れにくくするためにどんな管理をするのか」まで確認しておきましょう。

まとめ|歯ぎしりが強いとインプラントのトラブルリスクは上がりますが、対策はできます

強い歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラントの被せ物が欠ける、ネジがゆるむなどの機械的トラブルが起こるリスクは高くなります。

研究でも、歯ぎしりが疑われる患者さんでは、そうでない患者さんよりインプラント失敗リスクが高いことが報告されています。

だからといって、「歯ぎしりがあるからインプラントはできない」と決まるわけではありません。

重要なのは、

  1. 歯ぎしりの兆候を治療前に確認する
  2. 力が集中しにくいインプラント治療を計画する
  3. 人工歯や噛み合わせを適切に設計する
  4. 必要に応じてナイトガードを使用する
  5. 治療後も噛み合わせや人工歯を定期的に確認する

ことです。

また、ナイトガードは歯ぎしりそのものを完全に止めるための装置ではありません。歯や人工歯への機械的な負担を管理する方法の一つとして考えます。

歯ぎしりが強い方のインプラントで特に大切なのは、「どれだけ強いインプラントを入れるか」だけではなく、「そのインプラントにどのように力をかけないようにするか」まで考えることです。

すでにインプラントが入っていて、被せ物が欠ける、ネジがゆるむ、噛み心地が変わったといった症状がある場合は、そのまま使い続けず歯科医院で確認してもらいましょう。

関連ページ:心斎橋クローバー歯科のインプラント治療