歯周病

歯周病が手遅れってどんな状態?

歯周病が手遅れってどんな状態?

歯周病は初期の段階では自覚症状がほとんどないため、多くの人が知らず知らずのうちに病気を進行させてしまうことが少なくありません。しかし、症状が進行し、手遅れと判断されると、治療が非常に困難になります。歯周病が手遅れとされる具体的な状態と、その場合に考えられる治療法についてご説明します。

歯周病の進行とその影響

歯周病の進行の流れ

歯周病は歯と歯茎の間に細菌が繁殖し、炎症を引き起こす病気です。初期段階では、症状が軽度であるため見逃されがちですが、進行するにつれて症状が悪化し、最終的には歯を失うリスクが高まります。

  1. 初期段階・・歯茎の赤みや出血が見られる。
  2. 中期段階・・歯茎の後退、歯の動揺感。
  3. 末期段階・・歯がぐらつき、最終的に抜歯が必要になることも。

歯周病は進行するにつれて歯を支える骨を侵食し、口腔内全体に悪影響を及ぼします。このため、早期発見と治療が非常に重要です。

手遅れとされる歯周病の症状

歯周病が手遅れとされる状態とは、次のような深刻な症状が見られる場合です。

1. 歯の大きなぐらつき

歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が徐々に破壊されます。歯槽骨は、歯根を支える重要な役割を果たしているため、これが減少すると歯がしっかりと固定されなくなり、ぐらつきが生じます。

初期の段階ではわずかな動揺ですが、手遅れの状態では歯が大きく揺れ、触れるだけで動くようになることもあります。隣の歯に接着して一時的に固定することもありますが、この段階では、歯を保存することが難しく、抜歯が必要になるケースが多いです。

2. 膿が出る

歯周病が手遅れの状態に達すると、感染が深く進行し、歯茎から膿が出ることがあります。この膿は、体内の防御反応として感染部位に集まった白血球や細菌の死骸などが混ざったものです。

膿が出る状態は、感染が重度であることを示しており、口腔内に強い悪臭を伴うことが多いです。また、膿が排出されない場合、感染が広がり、顔面の腫れや発熱などの全身症状を引き起こす可能性もあります。

3. 歯茎の後退

歯周病が進行すると、歯茎が大きく後退し、歯根が露出することがあります。健康な歯茎は歯の根元をしっかりと覆って保護していますが、歯周病による炎症や組織の破壊が進むと、歯茎が徐々に後退します。

これにより、歯が長く見えるようになり、歯根が外気や食物に直接さらされるため、知覚過敏やさらなる感染リスクが高まります。歯茎の後退が著しい場合、再生が困難となり、外科的治療が必要です。

4. 歯が脱落する

手遅れとされる歯周病の最終段階では、歯を支える骨や組織が完全に破壊され、歯がグラグラになって歯が自然に抜け落ちることがあります。

欠損した歯を補うためには入れ歯やインプラントの治療を行います。歯の脱落は見た目の問題だけでなく、咀嚼機能の低下や発音障害、消化器官への負担増加など、全身の健康にも悪影響を及ぼします。

これらの症状が現れた場合、歯周病は既に手遅れとされる段階に達しており、早急な治療と対応が求められます。適切な治療を受けることで、症状の進行を遅らせたり、部分的に改善したりすることが可能ですが、早期の発見と予防が何より重要です。

手遅れと診断された場合の治療法

歯周病が手遅れと診断された場合、治療はかなり専門的で集中的なものになります。

1. 歯周外科手術

手遅れの歯周病では、通常のスケーリングやルートプレーニング(歯石除去と歯の根を滑らかにする処置)では不十分な場合が多く、外科的な介入が必要になります。

歯周外科手術は、歯周ポケット内部の歯垢や歯石を徹底的に除去し、感染を除去する手術です。この手術では、歯肉を切開して歯根の表面を露出させ、目視で炎症や汚れを取り除きます。

  • フラップ手術・・歯肉を切開して持ち上げ、歯周ポケット内を清掃した後、再び縫合する手術。

2. 抜歯とインプラント

歯周病が進行しすぎて、歯を保存できない場合、抜歯が必要になります。歯を失った後は、放置するとさらに口腔内のバランスが崩れて、他の歯や歯茎に悪影響を与える可能性があるため、インプラントや入れ歯で欠損した部分を補うことが一般的です。

インプラント

天然歯とインプラントの違い失った歯根の代わりに顎骨に人工のインプラント(人工歯根)を埋め込み、その上に上部構造(被せ物)を取り付ける治療法です。インプラントは天然の歯にそっくりな見た目で、良く噛めることが特徴ですが、歯周病の影響で骨の損失が大きい場合、骨移植などの前処置が必要となることがあります。

3. 骨移植手術

歯周病によって歯槽骨が大きく失われている場合、インプラントを支えるために骨の再生が必要です。この場合、骨移植手術が行われます。骨移植では、患者自身の骨や人工骨を使用して、失われた部分に骨を補います。骨が再生するまで数ヶ月かかることがありますが、この手術によってインプラント治療が可能になることがあります。

4. 歯肉移植手術

歯周病により歯茎が大きく後退している場合、歯肉移植手術が行われることがあります。この手術では、口腔内の他の部分から採取した歯肉を移植し、後退した歯茎を補うことで、歯根の露出を防ぎ、見た目や感覚を改善します。また、歯肉移植は炎症の再発を防ぐためにも効果的です。

5. 全身的な管理とメンテナンス

手遅れと診断された歯周病患者には、口腔内だけでなく全身の健康状態も考慮した管理が必要です。糖尿病などの全身疾患が歯周病を悪化させる可能性があるため、これらの疾患がある場合は、医科と歯科が連携して治療にあたります。さらに、手術後も定期的なメンテナンスとチェックが不可欠です。これにより、再発を防ぎ、治療後の健康状態を維持することができます。

まとめ

歯周病が手遅れとされる状態に至ると、治療は外科的な介入や抜歯、インプラントなど、時間と費用を要する大掛かりなものとなります。適切な治療を受けることで症状を緩和し、病気の進行を食い止めることは可能です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 心斎橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 山田 秀史

2007年 松本歯科大学卒業。2011年 松本歯科大学大学院卒業。日本口腔外科学会認定医。アストラテックインプラント認定医。

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