歯を失った際の治療法として、オールオン4と総入れ歯があり、これらの治療法には費用や機能性に違いがあります。オールオン4と総入れ歯の費用の差、それぞれの特徴、選択時のポイントなどについてご説明します。
オールオン4とは
オールオン4は、4~6本のインプラントで12本分の上部構造を支える治療法です。通常、片顎に4本のインプラントを埋入し、その上に固定式の上部構造を装着します。埋入本数が少ないため、従来のインプラント治療よりも手術回数や費用を抑えることが可能です。また、骨の量が少ない患者さんでも適用できる場合があります。
総入れ歯とは
総入れ歯は、全ての歯を失った場合に使用される取り外し可能な義歯です。歯茎や顎の骨にフィットするように作られ、食事や会話を補助します。保険適用が可能で、費用を抑えられる点が特徴です。ただし、咬合力が天然歯よりも劣るため、硬い食べ物の摂取に制限が生じることがあります。また、お口の中での異物感が強いため、慣れが必要です。
オールオン4と総入れ歯の費用比較
オールオン4の費用は、片顎で約200万~400万円が相場とされています。これは、使用する材料やクリニックによって異なります。一方、総入れ歯は保険適用の場合、片顎で約3,000円~2万円程度と非常に経済的です。ただし、総入れ歯を快適に使うために保険適用外の素材やデザインを選択するケースも多く、その場合は費用が増加することがあります。
費用以外の考慮点
治療を選択する際、費用だけでなく、以下のような観点も重要です。それぞれの治療法がもたらす利点と課題を把握し、自分に合った選択をする助けとなります。
1. 機能性と快適さ
オールオン4の機能性
オールオン4は固定式の人工歯を使用するため、咬合力(噛む力)が天然歯に近い状態まで回復します。これにより、硬い食品や繊維質の多い食品も噛み切りやすく、食事の幅が広がります。また、固定式なので装着感が良く、言葉の発音の違和感も少ないです。
総入れ歯の機能性
総入れ歯は取り外し可能な構造です。手軽に汚れを清掃できる一方、咬合力はオールオン4より劣ります。また、食事中にずれたり外れたりする可能性があり、これが使用者にストレスを与える場合もあります。
2. 審美性
オールオン4の審美性
上部構造をセラミックで作製すれば、天然歯と殆ど同じ形状の歯を作ることが出来ます。セラミックの表面は汚れがつきにくいので、白いきれいな人工歯を維持することが出来ます。
総入れ歯の審美性
保険適用内の素材を使用すると、入れ歯の表面に汚れがつきやすく、審美性がやや制限される場合があります。自費診療の入れ歯は審美性を高める設計も可能ですが、費用が増加します。
3. メンテナンスと寿命
オールオン4のメンテナンス
日常の歯磨きや定期的な健診が欠かせません。また、長期間使用するためには、インプラント部分や人工歯のチェック・調整が必要です。ただし、しっかりメンテナンスを続けることで10年以上の寿命を期待できます。
総入れ歯のメンテナンス
毎日取り外して清掃する必要があり、適切に保管しないと変形や劣化の原因となります。また、歯茎や顎の骨の変化に伴い、定期的に調整や作り直しが必要です。寿命は平均5~7年程度とされています。
4. 顎の骨や口腔内の健康への影響
オールオン4の影響
インプラントは顎の骨に固定されて咬合力が骨に直接伝わるため、顎の骨が痩せにくいという利点があります。その結果、顔の輪郭の維持にもつながります。
総入れ歯の影響
総入れ歯では咬合力が直接骨に伝わらないため、顎の骨が徐々に痩せてしまうことがあります。これにより、将来的に入れ歯のフィット感が悪くなり、見た目の変化も懸念されます。
5. 適用可能な条件やライフスタイル
オールオン4の適用条件
顎の骨の量や質が一定基準を満たしている必要があります。骨量が少ない場合は増骨の処置が必要になり、骨造成手術が追加されることもあります。また、全身疾患がある患者さんには慎重な対応が必要です。
総入れ歯の適用条件
特に制約は少なく、ほとんどの患者さんに適用可能です。全身疾患があっても、比較的安全に利用できる点が利点です。ただし、ライフスタイルとして日常的に入れ歯の取り扱いに慣れる必要があります。金属アレルギーの方は、入れ歯に金属が使われていないか必ず事前にチェックしましょう。
6. 心理的な影響
オールオン4の心理的な影響
固定式であるため、装着感が自然であり、他人に治療をしていることが気付かれにくいです。これが患者さんの自信の向上に繋がります。
総入れ歯の心理的な影響
取り外しが必要なため、場合によっては他人に気付かれる可能性があります。また、外れる心配がストレスになる方もいます。
7. 手術や処置に対する負担
オールオン4の手術負担
外科手術が必要であり、患者さんの健康状態に左右されます。手術に伴う痛みや腫れがあるため、術後の回復期間にも考慮が必要です。
総入れ歯の処置負担
手術は必要なく、型取りから装着まで比較的簡単に進められます。ただし、お口にフィットしない場合には調整が何度も必要になります。
これらのポイントを総合的に考慮し、患者さんのライフスタイルや健康状態に最適な選択をすることが大切です。どちらの選択肢にもメリットとデメリットがあるため、歯科医師との十分な相談が重要です。
インプラント治療が難しいケースと対処法
以下のような場合は、インプラント治療が難しいことがあります。
- 骨の量が不足している場合・・骨造成や骨移植などの処置が必要となることがあります。
- 全身疾患がある場合・・糖尿病や高血圧などの持病がある場合、主治医と連携し、適切な管理のもとで治療を進める必要があります。
- 妊娠中の方・・手術や投薬が必要なため、産後に治療を検討することが一般的です。
これらのケースでは、専門医と相談し、適切な対処法を検討することが重要です。
まとめ
オールオン4と総入れ歯は、それぞれ費用や機能に違いがあります。費用面では総入れ歯が経済的ですが、機能性や審美性を重視する場合はオールオン4が適していることがあります。患者さんの状況やご希望に応じて、歯科医師と十分に相談し、最適な治療法を選択することが大切です。