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乳歯の歯並びはそこまで気にしなくてよい?

乳歯の歯並びはそこまで気にしなくてよい?

乳歯の歯並びはそこまで気にしなくても良いでしょうか。乳歯の歯並びに対する基本的情報や悪くなる原因、永久歯へ影響を与えるのか、対処が必要かどうかについて詳しくご紹介いたします。

乳歯の歯並びの基本や特徴

乳歯の歯並びは、子どものお口の健康と成長において非常に重要な役割を果たしています。乳歯は生後6か月頃から生え始めて2〜3歳までに20本の歯が揃い、永久歯が黄色がかっているのに比べて白い傾向にあります。生え始めの前歯が斜めに生えているけど大丈夫だろうかとお悩みを持つパパやママはおられますが、顎が大きくなれば正しい向きになるケースが多いため、それほど心配しなくても大丈夫です。乳歯は永久歯が生えるまで見た目のためのつなぎのような一時的な歯と考えられがちですが、実は将来の永久歯への大切な土台です。

乳歯の主な役割

では、乳歯の主な役割についてご説明します。

噛む機能をサポート

食べ物をしっかり噛むことで消化を助け、含有されている栄養素をしっかりと吸収することができます。

噛むことで顔の形を整える

噛む機能が習慣づいてくると、顎を発達させることが出来ます。正しい顎の発育ができれば、自然と顔の輪郭も整ってきます。

正しい発音を促進

乳歯が生え揃って位置が整うと発音がスムーズになり、言葉の発達につながっていきます。

永久歯の道しるべとなる

乳歯が正しい位置に生えていると、後から生える永久歯がスムーズに生え揃うためのスペースが確保されます。

乳歯の歯並びが悪くなる原因

乳歯の歯並びが悪くなる原因についてご説明します。

指しゃぶり

長期間の指しゃぶりを行うと、上顎の前歯に力をかけ続けていることになります。歯や顎は指が当たる圧力で上顎前突(出っ歯)や開咬(前歯が噛み合わない)という不正咬合になり、歯並びを乱す原因となります。

舌の癖

舌先を前歯にくっつけて押し出すような癖を続けていると、上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)になることがあります。正しいポイントに舌を置くことで上顎が成長します。

頬杖やうつぶせ寝、横向き寝をする

頬杖をついたり、横向き寝やうつぶせ寝が習慣化すると、歯や顎の片側に一定の力がかかります。顎が変形してしまうと左右の歯並びが非対称で噛み合わせが悪くなったり、下顎が発達しなくなってしまいます。歯並びのみの問題ではなく、顎の発達、将来的に顎関節症のリスクも考えられます。

口呼吸をしている

頬、舌、唇の力が加わって顎が発達するのに、口で呼吸をしてしまうと、舌の位置は下顎の奥になり、舌の力が加えられません。お口周りの筋肉や唇の力も変化してしまうため、上顎前突(出っ歯)、叢生(歯並びが悪い)になってしまいます。鼻炎で口呼吸になる方は耳鼻科で治療をしてぽかん口にならないよう注意し、就寝中にお口を開けている方は口呼吸用のテープを貼って効果を試してみましょう。

唇や爪を噛む癖がある

唇や爪を噛む癖があると、前歯に強い力がかかり、変形が起きます。下唇を噛んでしまう子供は出っ歯になりやすく、上唇を噛んでしまう子供は受け口になりやすいです。ただ、いずれの癖も心理的な要因が関係している場合が多いため、ストレスを溜めないように注意してあげましょう。

乳歯が抜け落ちた

虫歯や外傷で乳歯が失われると、その部分のスペースが失われて、隣接する歯が移動して歯並びが悪くなることがあります。

姿勢が悪い

猫背になり頭と首が正しい姿勢より前にあるのを頭頸部前方位姿勢(フォワードヘッドポスチャー)と言います。スマホ首と一般的に呼ばれる状態ですが、顎が引っ張られ口が開きやすくなり、口呼吸を引き起こしがちで、嚥下もしづらいです。

顎の発育不足

顎の骨が十分に成長しない場合、歯がきちんと並ぶスペースが足りなくなり、歯並びが乱れがちです。

遺伝

親から遺伝する骨格や歯の形は、乳歯の歯並びに影響を与えます。

乳歯は永久歯へ影響を与える?

乳歯の歯並びが悪いまま放置すると、永久歯にも影響を与える可能性があります。このような問題を防ぐためには、乳歯の段階から歯並びに注意を払うことが重要です。

永久歯が正常に生えない

乳歯の位置がズレて生えていると、正しい場所に永久歯が生えるスペースがなくなります。永久歯は乳歯よりサイズが大きいため、歯並びがデコボコしてしまうことがあります。

噛み合わせの問題

歯並びが悪いと噛み合わせにも影響します。顎の成長に左右差が生じたり、歪みが起きることがあります。

虫歯や歯周病のリスクが増加

歯が重なっている部分は磨きにくいため、食べかすや歯垢(プラ―ク)が溜まりやすいです。それらは口腔内に潜む細菌の餌になりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

発音や顔のバランスに影響

乳歯の歯並びが悪いと、正しい発音ができなかったり、顔の左右バランスに影響が出ることがあります。発音や歯並びを周囲に指摘されると、子供の心理的負担が大きくなり、歯を見せて笑ったり、会話するのを避けてしまいます。

乳歯の歯並びと歯科での治療方法

乳歯の歯並びには日常生活でのケアと歯科医院でのケアを行うことをおすすめします。

日常生活でケアすべきこと

まず、日常生活でのケアすべきことです。

正しい噛み癖をつける

食事の際に正しい姿勢で左右両方の歯で均等に噛む習慣をつけ、上下顎のバランス良い成長を促します。また、姿勢を良くして咀嚼することで誤嚥も防げます。よく噛むことで栄養素の吸収もしやすくなります。

指しゃぶりや舌癖を改善する

指しゃぶりや口呼吸は市販のグッズを使用してみるのも一つの方法です。口呼吸や頬杖は気づいた時に指摘しましょう。怒るのではなく「お鼻でスーハ―できる?どっちが上手かな?」などの声掛けで子供はやる気になります。難しい場合は小児歯科で相談し、適切な対処で改善しましょう。

乳歯の虫歯を防ぐ

正しいブラッシングを行い、乳歯を健康に保つことが重要です。年齢に合った歯ブラシやデンタルフロスを使用して、歯垢をしっかりと取り除くことが大切です。

栄養バランスの取れた食事を心がける

骨や歯の成長をサポートするために、カルシウムやビタミンDを含む食品を積極的に摂取しましょう。

歯科医院でケアすべきこと

一方、歯科医院でのケアすべきことです。

フッ素塗布とシーラント

乳歯は永久歯に比べて虫歯になると、エナメル質や象牙質が薄いため、進行が早いです。そのため、定期的に小児歯科がある歯科医院を受診しましょう。虫歯予防でフッ素を塗布して歯質を強化し、汚れが溜まりやすい奥歯の溝をシーラントで保護することでお口の中を健康に保てます。

咬合誘導

小児期における噛み合わせを育てて、口腔機能を正常に導くことが咬合誘導です。顎の成長や歯並びの発達を助けるために、専門の器具を使用して歯並びを整えます。マウスピース、床矯正(しょうきょうせい)、リンガルアーチなどで歯や顎の発達をコントロールしていきます。

態癖(たいへき)改善のサポート

指しゃぶりや舌癖を改善するための指導や、専用の器具を使った治療が行われることもあります。MFT(口腔筋機能療法)をして、口唇や舌の位置の改善が目的です。指しゃぶりや舌癖に対して効果が見込まれます。

乳歯の歯並びで問題があれば早く発見し、適切な対処をすると、将来の永久歯のトラブルを未然に防ぐことができます。永久歯からの矯正では歯を動かすスペースを作るため、抜歯処置を行ったうえで歯列矯正を開始しますが、成長途中の子供の場合、顎を広げてスペースを確保することが出来るため、健康な歯を抜かずに済む可能性があります。

まとめ


乳歯の歯並びについての基本情報や原因、影響、予防法など詳しく解説しました。一時的な歯ではなくその後の口腔環境に大きな影響を与えます。子どもの成長に合わせて適切なケアを行い、健康で美しい歯並びを育てていきましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 心斎橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 山田 秀史

2007年 松本歯科大学卒業。2011年 松本歯科大学大学院卒業。日本口腔外科学会認定医。アストラテックインプラント認定医。

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心斎橋クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック