
ふと鏡を見たとき、そこにあったはずの歯がない、そんな経験をされた方はおられますか。
「このままで大丈夫なのかな?」
「食事がしづらくなってしまった…」
「人前で笑うのが少し恥ずかしくなった」
そんなふうに、歯を失うことは見た目だけでなく、心にも小さな影を落とすことがありますよね。でも、ご安心ください。今は歯を失っても、しっかり噛めて、笑顔になれる方法がたくさんあります。
大切なのは、「放置しないこと」。
あなたの笑顔と健康のために、今できることを一緒に考えていきましょう。
なぜ歯を失ったまま放置してはいけないの?
歯が抜けたままの状態を放置すると、以下のような問題が起こる可能性があります。
噛み合わせが悪くなる
抜けた歯の周りの歯が移動し、噛み合わせが乱れてしまうことがあります。
顎の骨が痩せる
歯がなくなると、骨に刺激がなくなり、骨が痩せてしまうことがあります。特に長期間放置すると、治療が難しくなることも。
発音や食事がしにくくなる
特に前歯がないと発音が不明瞭になったり、奥歯がないと食事をしっかり噛めなくなったりします。
→ そのため、早めに適切な治療を受けることが大切です。
歯がない場合の治療法は?
歯を失った場合の治療法として、主に次の3つがあります。
1. 入れ歯(義歯)

手軽に使える治療法で、取り外しが可能な人工の歯です。
歯を失った部分に装着し、見た目や噛む機能を補う役割を果たします。入れ歯には大きく分けて、すべての歯を失った場合に使用する「総入れ歯」と、一部の歯が残っている場合に使用する「部分入れ歯」があります。部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定するタイプが一般的ですが、最近ではバネを使わないタイプのものもあります。
入れ歯の最大の特徴は、外科手術を必要とせず、比較的短期間で作製できることです。歯を失った状態のまま放置すると、噛み合わせが乱れたり、食事がしづらくなったりするため、早めに対応することが大切です。入れ歯は、そうした問題を改善するための手軽な治療法の一つと言えるでしょう。
作製の流れとしては、まず歯科医院でお口の型を取り、その型をもとに患者さんの歯並びや噛み合わせに合った入れ歯を作ります。作製後は、実際に装着して調整を行い、違和感や痛みが出ないように微調整を重ねていきます。入れ歯は、最初のうちは口の中に違和感を覚えることが多いですが、慣れることで快適に使えるようになります。
入れ歯のメリットとしては、比較的安価で治療を受けられることや、歯ぐきの状態が変化しても作り直しや調整がしやすいことが挙げられます。一方で、取り外し式であるため、毎日のお手入れが必要であることや、食事の際にずれたり、噛む力が天然の歯に比べて弱くなることがデメリットとして挙げられます。
また、入れ歯を快適に使い続けるためには、日々のケアが欠かせません。使用後はしっかり洗浄し、歯ぐきに負担をかけないよう定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが大切です。特に、長年使用していると、歯ぐきが痩せて入れ歯が合わなくなることがあるため、その都度調整や作り直しを検討する必要があります。
→ 手術に抵抗がある方や、手軽な方法を希望する方に向いています。
2. ブリッジ

抜けた歯の両隣の歯を支えにして、人工の歯を橋のようにかける方法です。取り外し式の入れ歯とは異なり、一度装着すれば固定された状態になるため、装着後の違和感が少なく、噛み心地も比較的安定しやすいという特徴があります。
治療の流れとしては、まず支えとなる歯を削り、その上に被せ物をするための土台を作ります。その後、患者さんの歯並びや噛み合わせに合った人工の歯を作製し、土台となる歯にしっかり固定します。歯を削る必要があるため、治療前に歯の健康状態をしっかりと確認し、むし歯や歯周病がある場合は先に治療を行うことが大切です。
ブリッジの最大のメリットは、見た目が自然で、噛む力も比較的天然の歯に近いレベルまで回復できることです。特に前歯に適用した場合は、入れ歯よりも自然な仕上がりになりやすく、審美的な面でも満足度の高い治療法です。また、インプラントのように外科手術を必要とせず、比較的短期間で治療を終えられるのも魅力の一つです。
ただし、ブリッジを適用するためには、両隣に健康な歯が必要です。支えとなる歯を削る必要があるため、長期的に見たときに健康な歯に負担がかかり、むし歯や歯の破折のリスクが高まる可能性があります。そのため、ブリッジを選択する場合は、支えとなる歯の健康を維持するために、日々の丁寧なケアが欠かせません。特に、ブリッジの下に歯垢がたまりやすいため、歯磨きの際には専用のデンタルフロスや歯間ブラシを使って、隙間の汚れをしっかり取り除くことが大切です。
また、支えとなる歯に過度な負担がかかることで、将来的にその歯が弱くなってしまうケースもあります。特に、もともと歯が弱い方や、歯ぎしりや食いしばりのクセがある方は、支えの歯がダメになってしまうリスクを考慮しながら慎重に選択する必要があります。
→ 周囲の歯が健康で、固定式の歯を希望する方におすすめです。
3. インプラント

人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に被せ物を装着する方法です。
インプラントとは、失われた歯の部分に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。歯を一本だけ失った場合から、複数本、さらにはすべての歯を失った場合まで幅広く対応できる治療法であり、近年、多くの患者さんに選ばれるようになっています。人工の歯根は主にチタンという生体親和性の高い金属で作られており、顎の骨としっかり結合することで、天然の歯に近い安定感のある噛み心地を実現します。
治療の流れとしては、まず歯科医院で患者さんのお口の状態を詳しく確認し、インプラントが適用できるかどうかを診断します。その後、顎の骨に人工の歯根を埋め込む手術を行い、数ヶ月かけて骨としっかり結合するのを待ちます。この期間がとても大切で、しっかりと定着することで、噛む力をしっかり支えることができるようになります。人工の歯根が安定したら、その上に人工の歯を取り付け、自然な噛み合わせになるように調整していきます。
インプラントの最大のメリットは、見た目も噛み心地も天然の歯に近い仕上がりになることです。入れ歯やブリッジとは違い、他の歯に影響を与えることがなく、独立した形で治療を行うことができるため、周囲の健康な歯を守ることができます。また、しっかりと固定されるため、食事の際にずれたり、外れたりする心配がなく、硬いものもしっかり噛めるようになります。そのため、食事を楽しむことができるだけでなく、しっかり噛むことで消化を助け、健康維持にも役立ちます。

一方で、インプラントには注意すべき点もあります。まず、外科手術が必要なため、治療に対する不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。手術後の回復期間も考慮する必要があり、骨とインプラントが結合するのを待つために、治療が完了するまでに数ヶ月かかることがあります。また、インプラントを長く快適に使い続けるためには、毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な歯科健診が欠かせません。天然の歯と同じように、歯垢がたまることで炎症を起こし、最悪の場合はインプラントが抜けてしまうこともあるため、正しいケアを続けることが重要になります。
さらに、インプラントは保険が適用されないことが多く、他の治療法と比べて費用が高額になる点も考慮する必要があります。しかし、しっかりとしたケアを行えば長持ちしやすく、一度治療を終えれば、長期間快適に使える可能性が高いため、長期的な視点で考えると価値のある治療法とも言えます。
→ 健康な骨があり、長期的な安定性を求める方におすすめです。
どの治療法を選べばいいの?
「歯を失ってしまった…どうしよう。」
そんなふうに不安な気持ちでいる患者さんは、決して少なくありませんよね。
「治療を受けたほうがいいのは分かっているけど、どれを選べばいいのかわからない…。」
「費用も気になるし、手術は怖いし、どの方法が一番いいんだろう?」
そんな疑問や不安を抱えている患者さんも、多いのではないでしょうか。
実は、歯を失ったときの治療法にはいくつかの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。どの方法が最適かは、患者さんの お口の状態、生活スタイル、費用、そしてご自身の希望 によって異なります。
ここでは、それぞれの治療法をより詳しく解説しながら、選ぶ際のポイントについてお話ししていきますね。
治療法の選び方 どんな基準で決める?
治療法を選ぶときに、患者さんが考えておきたいポイントは以下のようなものがあります。
どのくらいしっかり噛みたいか?
ある程度噛めればよいなら「ブリッジ」や「入れ歯」でもOK。
違和感の少ない治療がいい?
「ブリッジ」も固定式なので馴染みやすいが、支えになる歯を削る必要がある。
「入れ歯」は最初は違和感が出ることが多いが、慣れれば使いやすくなる。
周りの歯に負担をかけたくない?
「ブリッジ」は支えになる歯を削る必要があるため、健康な歯への負担がある。
「入れ歯」は両隣の歯にバネをかける場合、多少の負担がかかることがある。
費用はどのくらいかけられる?
「インプラント」は高額になるが、長期的に考えると良い投資とも言える。
メンテナンスはどこまでできる?
「ブリッジ」は支えの歯のケアをしっかりしないと、むし歯になりやすい。
「入れ歯」は毎日の取り外しと清掃が必要。
治療法ごとの特徴を解説
では、それぞれの治療法について、もう少し詳しく見ていきましょう。
① 入れ歯(義歯)
「できるだけ簡単に治療したい」「費用を抑えたい」方に向いています。
メリット
- 比較的 短期間で治療が完了 する。
- 外科手術が不要 で、体への負担が少ない。
- 費用が比較的安価で、 健康保険が適用される場合がある 。
デメリット
- 噛む力が弱くなる ため、硬いものを食べるのが難しくなることも。
- 違和感が出やすい ため、慣れるまで時間がかかることがある。
- バネが見える ため、見た目が気になる方もいる。
\ こんな方におすすめ /
→「手術はしたくないし、とりあえず歯を入れたい」
→「費用をできるだけ抑えたい」
→「取り外しができる治療法がいい」
② ブリッジ
「しっかり噛めるようになりたい」「入れ歯はイヤ」という方に向いています。
メリット
- 固定式なので、入れ歯より違和感が少ない。
- 見た目が自然で、装着してもほとんど気づかれない。
- 比較的 短期間で治療が終わる(数週間?1ヶ月ほど) 。
デメリット
- 両隣の歯を削る必要があるため、健康な歯への負担が大きい。
- 支えの歯に負担がかかるため、将来的にその歯がダメになるリスクがある。
- 支えの歯の周りに歯垢が溜まりやすいため、しっかりとしたケアが必要。
\ こんな方におすすめ /
→「しっかり噛みたいけれど、手術は避けたい」
→「固定式の歯がいい」
→「周りの歯を削ることに抵抗がない」
③ インプラント
「とにかくしっかり噛みたい!」「長く快適に使いたい」という方に向いています。
メリット
- 天然の歯とほぼ同じように噛める!
- 周りの歯に負担をかけずに治療できる。
- 違和感が少なく、見た目も自然。
デメリット
- 手術が必要 なので、体への負担がある。
- 治療期間が長く(数ヶ月)、費用が高い。
- 定期的なメンテナンスが必要。
\ こんな方におすすめ /
→「見た目も噛み心地も、できるだけ天然歯に近づけたい!」
→「長持ちする治療法を選びたい」
→「周りの歯に負担をかけたくない」
患者さんの健康状態やライフスタイルによっても適した治療法は変わります。
まずは歯科医院で相談し、ご自身に合った治療を見つけることが大切です。
患者さんが 安心して治療を受けられるように、しっかりとサポート させていただきます。
お口の健康と、素敵な笑顔を取り戻すお手伝いができることを願っています!
治療後も大切!お口の健康を守るために

どの治療法を選んでも、お口の健康を保つために以下のことを意識しましょう。
- 毎日の歯磨きを丁寧に → 特にブリッジやインプラントは、歯垢がたまりやすいため、しっかりお手入れを。
- 定期的な健診を受ける → 入れ歯の調整や、インプラントのメンテナンスなど、定期的な歯科健診が重要です。
- 食生活にも気をつける → 硬いものを無理に噛まないようにするなど、治療後の歯を大切にしましょう。
まとめ
歯を失っても、現在ではさまざまな治療法があり、適切な方法を選ぶことで快適な生活を送ることができます。
「どの治療法がいいのかわからない…」という方は、一度歯科医院で相談してみてくださいね。患者さんにとってベストな治療法が見つかるよう、しっかりサポートさせていただきます。