歯周病は重度になると歯を失う危険がありますので、軽度のうちにしっかりとお口のケアをしてそれ以上進行しないようにしたいものです。歯周病を進行させないためにはどうすれば良いのかご説明します。
歯周病を進行させないために自宅でできること
歯周病の治療には歯科医院での定期健診(歯のクリーニング)が必要ですが、それ以外にも生活習慣の改善など、出来ることがあります。
1.毎日の歯磨きをていねいに行う
歯周病の進行を防ぐためには、1日2〜3回の歯磨きが基本です。特に、歯と歯茎の境目に歯垢がたまりやすいので、歯茎にブラシを45度の角度で当てて、やさしく丁寧にブラッシングすることが効果的です。
- 柔らかめの歯ブラシを使い、過度に力を入れずに磨くことで、歯茎を傷つけずにきれいに保てます。
歯間ケア
歯と歯の間には歯ブラシが届かないため、歯間ブラシやデンタルフロスを使って汚れをしっかり除去することが大切です。特に歯周病が進行している場合、歯間ブラシが有効です。適切なサイズの歯間ブラシを使用し、歯周ポケット内の汚れを取り除きましょう。
2.食生活の改善
糖分を控える
食事やお菓子やジュースに含まれる糖分を摂り過ぎると、虫歯の原因になることは良く知られています。糖分を摂り過ぎないようにすることは歯周病の予防にも効果的です。
また、糖尿病は歯周病と相関関係があることがわかっており、糖尿病になると歯周病が悪化し、歯周病が悪化すると糖尿病になりやすくなるといわれています。
ビタミンCの摂取
歯周病の進行を抑えるためには、免疫力を高めるビタミンCが効果的です。ビタミンCは歯茎の健康を保つために重要な栄養素であり、日常の食生活にフルーツや野菜を取り入れることで、歯茎の回復力を向上させることができます。
- 例: 柑橘類、ピーマン、ブロッコリーなどがビタミンCを豊富に含む食材です。
3.タバコを吸わない
タバコには多くの種類の有害物質が含まれており、その中でもニコチンは毛細血管を収縮させるため歯茎の血流を悪くして免疫力を下げますので、歯周病菌などに感染しやすくなります。
喫煙者は歯周病にかかってからの進行も早く、非喫煙者よりも6倍程度早いとされています。
喫煙の影響
喫煙は歯周病の進行を早める最大のリスク要因の一つです。タバコに含まれる有害物質が歯茎の血流を悪化させ、歯周病の治癒力を低下させるため、禁煙が推奨されます。禁煙することで、歯茎の炎症が改善され、治療の効果が高まります。
4.口呼吸をやめる
日常的に口呼吸をしているとお口の中が常に乾燥した状態になり、細菌に感染しやすくなります。口呼吸の癖がある方は、出来るだけ鼻呼吸をするように意識しましょう。
5. ストレス管理
ストレスと歯周病の関係
ストレスがたまると、免疫力が低下し、歯周病が悪化する可能性があります。定期的な運動やリラックスする時間を持つことで、ストレスを軽減し、体全体の健康を保つことが、歯周病の進行を抑える一助となります。
6. マウスウォッシュの活用
抗菌効果のある洗口液の使用
日常のケアに加えて、抗菌成分を含むマウスウォッシュを使用することで、歯茎の細菌を減らし、歯周病の進行を防ぐことができます。特にクロルヘキシジンなどが含まれた洗口液は、歯周病予防に効果的です。
歯周病にはなかなか気づけない
歯周病はお口の中の歯周病菌に感染して起こる感染症で、成人の約8割は歯周病にかかっているといわれています。
歯周病に感染すると少しずつ歯茎や骨の組織が壊されていき、最後には歯が抜けてしまいます。しかし最初はほんの少しの歯茎の違和感から始まり、その段階ではなかなか自分では気づくことが出来ません。
「歯磨きをしたら歯茎から血が出る」
「歯茎が腫れているような気がする」
など、何かの異常に気付いた時には、歯周病はそこそこ進行していますので、そのまま放置せずにすぐに治療を開始しなければなりません。
歯周病はどんな風に症状が進んでいくの?
歯周病はごく初期の段階で治療出来れば、それ程怖いものではないのですが、重症になってしまうと歯茎や骨に様々な変化が起こります。
歯周病はまず歯ぐきの炎症から始まり、その目安となるのが歯周ポケットの深さです。歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの溝のことで、3ミリ程度ならまずは歯肉炎と診断されます。
この「歯肉炎」が初期症状のボーダーラインとなり、この時点でしっかりと予防治療をうけることができれば、十分健康な歯ぐきに再び戻れます。歯肉炎から更に悪化した場合の進行過程は以下の通りです。
軽度の歯周病
歯ぐきだけではなく、顎の骨まで炎症が進みはじめると、歯周炎と呼ばれます。軽度の場合、歯ぐきが腫れて血が出るほか、冷たいものがしみるなどの症状があらわれます。歯周ポケットの深さは4ミリ程度です。
中等度の歯周病
さらに炎症が進むと、顎の骨が半分は溶かされた状態になります。舌で歯を押した時に歯が浮いているような感覚がしたり、グラついたりします。
歯ぐきから血だけではなく、膿が出たり、それが原因で口臭がきつくなったように感じます。歯周ポケットの深さは6ミリ程度です。
重度の歯周病
顎の骨が半分以上溶かされ、歯ぐきのゆるくなり後退が顕著になります。それによって歯が長く見えたり、歯の動揺はますます大きくなります。
このまま放置していると、歯は自然に抜け落ちるか、もしくは抜歯になります。歯周ポケットの深さは8ミリ程度です。
歯医者での歯周病の治療はどんなことをするの?
歯周病の進行を止めるには、歯科医院での治療が必要になります。歯周病の進行度によって治療内容は変わりますが、基本的には歯垢や歯石の除去を行ってお口の中の歯周病菌を減らし、汚れがつきにくい状態にします。
歯科医院で行う歯周病の基本的な治療法はスケーリングとルートプレーニングです。歯周病の原因となる歯垢や歯石を専門の器械で除去して、それらが歯に付着するのを防ぎ、歯周病の進行を抑えたり予防したりします。
歯周病がかなり進行していて深刻な場合は、フラップ手術と呼ばれる外科手術を行う倍もあります。
スケーリング
スケーリングは、スケーラーと呼ばれる特殊な器具を使って歯石を除去します。
歯周病菌は酸素を嫌いますので、歯周ポケットの奥でも盛んに活動しています。歯周ポケットが深くなると、その内部に歯石が付着してしまいます。歯石は表面がデコボコしており、歯周病菌が棲みつき増殖するのに絶好の環境となります。
そのため歯石を取り除くだけでも、歯周病菌の数をかなり減らすことが出来ます。
ルートプレーニング
歯周ポケットの内部に出来た歯石を取り除く場合に行うのが、ルートプレーニングです。
キュレットと呼ばれる専門の器具を歯周ポケットの深い部分まで入れ、歯の根の部分に着いた歯石を丁寧に取り除いていきます。仕上げに歯面を滑らかに磨き上げ、汚れが再びつきにくくします。
フラップ手術
スケーリングやルートプレーニングを行っても歯肉の状態が改善しなかったり、すでに歯周病がかなり進んだ状態になっている場合は、フラップ手術と呼ばれる外科手術による治療が行われます。
フラップ手術は歯根の奥についている歯垢や歯石を、麻酔をしたあとメスで歯茎を切って露出させてから、スケーラーで歯根部分についた歯石を徹底的に除去します。
骨が溶かされてデコボコになってしまった部分を滑らかにして歯石をつきにくくし、歯茎を元通りに縫い合わせます。
歯周病を進行させないに関するQ&A
歯周病を進行させないためには、早期に対策を行うことが重要です。これには、毎日のきちんとした歯磨き、食事による糖分の摂取量を控える、タバコを吸わない、口呼吸をやめる、といった生活習慣の改善が含まれます。
歯周ポケットの深さは歯周病の進行具合を示します。3ミリ程度なら初期の歯肉炎、4ミリ程度で軽度の歯周病、6ミリ程度で中等度の歯周病、8ミリ程度で重度の歯周病と診断されます。
歯周病の治療法にはスケーリング、ルートプレーニング、フラップ手術などがあります。これらは歯科医院で行われ、病状によって適切な治療法が選ばれます。
まとめ
歯周病は悪化すると怖い病気で、全身的な疾患にも関連しています。歯周病を予防する、または症状を改善するには、まず歯科医院での定期健診を必ず受け、現在の歯や歯ぐきの状態をチェックして適切な治療を受けることが大切です。
それ以外にも毎日の歯磨きなどの口腔内のお手入れがしっかり出来るようになると、歯周病の症状を改善したり、病気の進行を食い止めたり出来るようになります。